アキバ系じゃない趣味

コードを離れて山を歩く プログラマーが登山に惹かれた理由

Tags: 登山, ハイキング, アウトドア, リフレッシュ, プログラマーの趣味

デスクから自然の中へ

私の仕事は、主にデスクの前でコードと向き合うことです。論理を組み立て、システムを作り上げていく作業は非常にやりがいがありますが、時に物理的な世界から隔絶されているような感覚を覚えることもあります。仕事が忙しい時期が続き、肩こりや目の疲れに加えて、少し視野が狭まっているように感じ始めた頃、友人に誘われて軽いハイキングに行ったのが、私の登山(ハイキングも含めた広義の意味で)との出会いでした。

山歩きの具体的な内容

私が実践しているのは、主に日帰りから1泊程度の「山歩き」です。特別なクライミング技術は必要なく、整備された登山道や自然歩道を歩くことが中心です。

具体的には、まず行きたい山やコースを選定します。山の難易度、歩行時間、標高差、景色の見どころなどを調べ、自分の体力や経験に合った計画を立てます。次に、天気予報を確認し、装備を準備します。登山靴、動きやすいウェア、ザック、地図やスマートフォンアプリ(YAMAPやGeographicaなど)、行動食、飲み物、雨具、ヘッドライトなどが基本的な装備です。

当日は、計画したルートを辿って山頂を目指したり、美しい景色を楽しみながら歩いたりします。休憩を取りながら水分補給や栄養補給をし、自然の中で過ごす時間を満喫します。下山後は温泉に立ち寄ることも多く、汗を流してリフレッシュします。

自然との対話、予期せぬ「バグ」との遭遇

私が山歩きに惹かれたのは、その非日常感と、身体を使って五感をフル活用する体験でした。デスクに座っているだけでは決して得られない、風の匂い、鳥の声、木々のざわめき、そして目の前に広がる雄大な景色。これらの感覚的な情報が、凝り固まった頭と体を解きほぐしてくれるように感じました。

プログラミングの世界は、全てがロジックで構成され、仕様通りに動くことを目指します。しかし、山の中では予期せぬことが起こります。急な天候の変化、体力の消耗、あるいは道を間違えるといった「バグ」が発生する可能性が常にあります。そうした状況で、冷静に状況を判断し、限られた情報やリソース(体力、食料、地図など)で最善の解決策を見つけ出すプロセスは、まるで本番環境で発生した未知の不具合に対応するかのようです。この、自然という予測不可能なシステムの中で、自身の判断力と体力を使って問題を解決していく点が、私にとってプログラミングとは異なる、しかし通じる面白さでした。計画通りに進む達成感はもちろんですが、計画通りにいかない状況を乗り越えた時の安堵感や充足感は格別です。

時間と費用について

山歩きにかける時間は、日帰りであれば移動時間を含めて半日から一日です。週末のどちらかを充てることが多いです。月に1~2回程度行くのが平均的でしょうか。泊まりとなると週末全体を使うことになります。

費用については、初期投資として装備に数万円から十数万円程度かかりました。登山靴、ザック、レインウェア、ヘッドライト、防寒着などは安全のためにも信頼できるものを選びたいからです。しかし、これらは一度購入すれば長く使えます。毎回の費用としては、交通費(電車賃や高速代)、食料、そして下山後の温泉代などが中心で、数千円程度です。レンタルサービスや、最初は身近な低山から始めるなど工夫すれば、初期費用を抑えることも十分に可能です。

仕事と人生への影響

山歩きを始めてから、プログラミングの仕事にも良い影響があったと感じています。まず、体力と集中力が向上しました。定期的に体を動かすことで、長時間デスクに向かっていても疲れにくくなり、思考のクリアさを維持しやすくなりました。また、山での計画性や問題解決の経験は、プロジェクト計画やトラブルシューティングの考え方にも活かされているように思います。自然の中でスマートフォンから離れて過ごす時間は、デジタルデトックスになり、心身のリフレッシュに繋がります。

人生という広い視点で見ると、山歩きは私に謙虚さを教えてくれました。自然の圧倒的な力の前では、普段自分が悩んでいることなど小さなことに思えます。また、美しい景色や達成感を共有することで、職場の同僚とは異なるコミュニティでの交流も生まれました。プログラミングとは全く異なる世界に触れることで、視野が広がり、人生をより多角的に捉えられるようになったと感じています。

これから始める方へ

もし山歩きに興味を持たれたなら、まずは気負わずに始めてみることをお勧めします。いきなり高い山に挑戦する必要はありません。自宅近くの里山や、よく整備された公園内のトレイルなど、手軽に歩ける場所から始めるのが良いでしょう。歩きやすい靴と動きやすい服装さえあれば、気軽に自然の中を歩く楽しさを体験できます。

最初は経験者と一緒に歩くのが安心です。もし周りに経験者がいない場合は、地域のハイキングクラブや、初心者向けの登山ツアーに参加してみるのも良い方法です。山の選び方、装備のこと、安全な歩き方など、実際に教えてもらうのが一番理解が深まります。

装備についても、最初はレンタルを利用したり、フリマアプリで中古品を探したりして、必要最低限を揃えることから始められます。本格的に続けると決めてから、少しずつ良いものを揃えていくのが現実的でしょう。何よりも大切なのは、無理をせず、天候や体調に注意しながら、自分のペースで楽しむことです。山はいつでもそこにありますから。

まとめ

プログラミングという論理的な世界で働く私にとって、山歩きは五感を刺激し、体を使う、全く異なるタイプの活動です。自然の中での計画、予期せぬ出来事への対応、そして目標達成の喜びは、プログラミングに通じる面白さもありつつ、日常とは違う充足感を与えてくれます。デスクから離れ、一歩山の中へ踏み出すことは、心身のリフレッシュだけでなく、仕事への集中力向上や視野の拡大にも繋がりました。もしあなたが日常に少し疲れていたり、何か新しい世界を見てみたいと感じているなら、山歩きはきっと新たな発見をもたらしてくれるでしょう。