アキバ系じゃない趣味

剣とアルゴリズム プログラマーがフェンシングに魅せられた理由

Tags: フェンシング, スポーツ, ライフスタイル, プログラマーの趣味, 体験談

導入:意外な出会い、剣の世界へ

私は普段、一日中PCの前に座り、コードと向き合っています。論理を組み立て、問題を解決していく作業はプログラマーとして当然の日常です。仕事自体にやりがいを感じていますが、ふと「身体を動かしていないな」「仕事以外の、予測不能な刺激が欲しいな」と感じることがありました。そんな時、知人が始めたという話を聞き、軽い気持ちで体験会に参加してみたのが、フェンシングとの出会いでした。

まさか自分が剣を持って人と対峙する日が来るとは思ってもいませんでした。静的な思考の世界から、瞬時に判断し、身体を動かす動的な世界への一歩は、新鮮な驚きに満ちていました。

趣味の具体的内容:剣とルール、そして駆け引き

フェンシングは、エペ、フルーレ、サーブルという3種類の剣とルールで行われる競技です。私が主に練習しているのはエペです。エペは全身どこを突いてもポイントになる最もシンプルなルールですが、その分、相手との駆け引きや戦略が非常に重要になります。

練習は、まず準備運動とフットワーク(足運び)から始まります。前進、後退、ランジ(突きを出すときの踏み込み)といった基本的な動きを繰り返し体に覚え込ませます。その後、ブレードワークとして剣の操作や捌き方を練習し、最終的にファイティング、つまり実際に相手と剣を交える練習を行います。

相手との距離を測り、一瞬の隙を見つけて突く。あるいは、相手の攻撃をいなし、反撃に転じる。これらの動作は、単なる力任せではなく、高度な集中力と戦略的な思考が求められます。

ハマった経緯・魅力:ロジックと身体の融合

フェンシングの魅力は、その戦術性と、それを実現するための身体的な動きの組み合わせにあると感じています。これは、まさにプログラミングにおける論理構築と、それをコードとして具現化する作業に少し似ているかもしれません。

相手の動きを予測し、自分の戦略を組み立て、瞬時に実行に移す。このプロセスは、バグの原因を特定し、修正策を考案し、実装する際の思考プロセスと共通する部分があります。ただし、フェンシングの場合は、思考と同時に身体が動かなければなりません。頭の中で完璧なロジックがあっても、体がついてこなければ意味がないのです。この、思考と身体が一体となって初めて成立する点が、プログラミングとは異なる、大きな面白さです。

また、ポイントを取る瞬間の達成感や、緊迫した状況での集中力、そして何より、ルールの中で相手と正々堂々と競い合うスポーツマンシップに強く惹かれました。

時間・費用感:継続に必要なリソース

フェンシングに費やす時間は、週に1回または2回、それぞれ2〜3時間の練習に参加しています。これに加えて、体力を維持するための自主トレーニングを行うこともあります。

費用については、初期費用として入会金が数万円、月謝が1万円〜2万円程度かかります。道具一式(剣、マスク、ウェア、プロテクターなど)を揃えるには、最低でも数万円から、こだわると十数万円かかることもあります。レンタルが可能な道場もあるので、最初はレンタルから始めてみるのが良いでしょう。継続することで、それなりに時間も費用もかかりますが、得られる充実感を考えれば、十分価値があると感じています。

プログラミング・仕事・人生への影響:心身のリフレッシュと新たな視点

フェンシングは、私のプログラミングスキルや仕事そのものに直接的な影響を与えるものではありません。しかし、論理的な思考力や集中力は、スポーツの駆け引きにおいても非常に役立っていると感じます。

それ以上に大きな影響は、心身のリフレッシュ効果です。仕事で煮詰まった時も、フェンシングの練習で汗を流すと、頭の中がクリアになり、新たな視点で問題に取り組めることがあります。また、瞬時の判断が求められる環境に身を置くことで、反射神経だけでなく、とっさの状況判断力も養われているように感じます。

何よりも、PCから離れ、全身を使って表現し、他者とリアルタイムで関わる時間は、私の人生に大きな彩りを加えてくれています。

趣味を通じて得られたもの:健康、規律、そして多様な交流

フェンシングを通じて得られたものは多岐にわたります。まず、身体的な健康維持、そして運動不足の解消は大きなメリットです。また、剣を扱う上での規律や、相手への敬意を学ぶことも重要です。

道場には様々なバックグラウンドを持つ人々が集まっています。学生、会社員、主婦、リタイアされた方まで、年齢や職業に関係なく、同じ趣味を通じて交流が生まれます。プログラマーという狭い世界だけでなく、多様な価値観や考え方に触れる機会が得られるのは、人生を豊かにする上で非常に有益だと感じています。

読者へのメッセージ/アドバイス:まずは一歩踏み出してみる

もし、あなたが今の日常に何か新しい刺激が欲しいと感じているなら、あるいは、頭だけでなく身体も使ってみたいと思っているなら、フェンシングに限らず、少しでも心惹かれるものがあれば、まずは体験会に参加してみることをお勧めします。

フェンシングは、運動経験がなくても、あるいは体力に自信がなくても始めることができます。年齢層も幅広いので、心配はいりません。必要なのは、「やってみたい」という好奇心と、新しいことに挑戦する勇気だけです。怪我のリスクはゼロではありませんが、適切な指導と防具があれば安全に楽しむことができます。

まとめ:非連続な体験が視野を広げる

プログラマーが必ずしもキーボードの前にだけいる必要はありません。論理的な思考を研ぎ澄ます一方で、フェンシングのように身体を使い、予測不能な状況に対応する経験は、仕事や人生に対する視野を広げてくれます。

私のフェンシング体験が、読者の皆様が「アキバ系じゃない」新たな趣味を見つけるための一助となれば幸いです。異なる世界に飛び込むことは、きっとあなたの想像以上に、多くの発見と成長をもたらしてくれるはずです。